第234回佐保カルチャー

   奈良には古き仏たち(5)ー興福寺北円堂の仏たちーを開催しました。

  

   講師:奈良国立博物館名誉館員 鈴木喜博氏

   日時:2019年4月24日(水)講演 佐保会館 午前11時~12時40分

                北円堂拝観 午後2時から

 

 鈴木喜博氏による人気の仏像シリーズ第5回目、男性10名を含む60名の参加がありました。

 301年ぶりの中金堂の再建に沸く興福寺の西側にひっそりとたたずむ北円堂は、721年の創建後、平家の焼き討ちを含め2度の焼失に遭いながらもその度に再興されています。そして鎌倉時代に再興されたお堂と仏像が今に至り、全て国宝に指定されています。今回、その中の無著(むじゃく)・世親(せしん)菩薩像に焦点を当て「対比」という観点から仏像の見方を教えて頂きました。インドに実在した法相学を確立した哲学者の兄弟、兄の無著は老人で弟の世親は壮年の像として、運慶の指揮のもと、一門の工房が製作しています。「老と壮との対比」は、目の表情、顎や頬の肉付き、鼻の形、肩や胸の肉取り、法衣の皺数、質感、袖口の開きなど、細部にわたって表されており、小津安二郎の老人の表現の仕方にも通じるものがあるとの事。また、大学で例えれば、無著は名誉教授、世親は准教授と分かりやすく説明をして頂きました。

 その後、本学の生協食堂で食事を楽しんだ後、特別公開中の北円堂に移動し、鈴木氏の説明を受けながら、堂内を何回も廻り、無著・世親像の正面からの対比、横からの対比、背後からの対比をじっくり観照し、運慶の仏像に対する深い心理描写の世界に浸ることができました。