第236回佐保カルチャー

 

 秋の見学会 「亀の瀬へ行こう」

 

 日 時:令和元年10月9日(水)10時30分~12時30分

 場 所:亀の瀬地すべり歴史資料室

 会 費:300円(保険代含む)

 参加人数:18人

 

 「亀の瀬」とは、奈良県から大阪府に流れる大和川の県境付近のことで、大和川の大阪府へのたったひとつの出口です。ところが、ここは地すべりしやすい地質であるために、記録に残る明治以降だけでも3度の大規模な地すべりが発生し、多大な被害をもたらしました。さらなる地すべりの発生で川がせき止められ、奈良県側にたまった大水が一度に大阪側に流れ込むと大阪に甚大な被害が発生する恐れがあることで、国の政策として地すべり防止工事が昭和37年から始まり、平成23年まで約50年にわたり行われました。

 

 この日は、現地に設けられた「亀の瀬地すべり歴史資料室」でビデオを視聴した後、国土交通省大和川河川事務所の坂本氏に、パネルや、世界最大規模の杭や当地の全体像の模型の前で、詳しく説明を受けました。

 そして、斜面から抜いた水を流す排水トンネルの中や、地下水を集める巨大な井戸を見学、また明治期に作られ昭和の初めの地すべりで埋もれてしまった国鉄関西本線のトンネル(平成20年、工事中に偶然に発見される)の貴重な遺構も見学することができました。

 その後、近くの祠「竜王社」まで移動して、西森真理氏(S54文学部地理学科卒業、S56修士課程修了)に江戸時代の名所図会などから読み解く「大和川舟運」についてお話を伺いました。明治期に鉄道が敷設されるまで、重要な運搬の手段として役割を果たした大和川、亀の瀬付近は難所のため、また、大坂と大和で管轄が違うため、大坂からの剣先船(けんさきぶね)は、ここで荷を下ろし、小型の魚梁船(やなぶね)に積み替えていました。当時は大和からは綿花が、大坂からは干鰯、油粕などの綿花栽培に必要な肥料が大きな交易の品だったそうです。

 

 世界に誇る日本の地すべり防止技術を目の当たりにし、また、大和川を行き来した多くの舟で栄えたこの地の人々の暮らしに思いを馳せ、とても興味深く感動を覚えた見学会でした。