240回佐保カルチャー 

「古典そぞろ歩き」山口裕子先生の古典講座(1

神話と歴史の間 【風土記と古事記・日本書紀】

講師   山口裕子先生

日時   令和21110日(火) 午後 130分~3

会場   奈良県文化会館 1階会議室  参加人数 38名   参加費 500円   

 

一向に収束の兆しの見えない新型コロナウイルス感染症の影響で佐保カルチャーも延期を余儀なくされておりますが、ウイズコロナの時代、何とか出来るかたちでと考え、場所を、入場が規制されている佐保会館から奈良県文化会館に移し、山口裕子先生の「古典そぞろ歩き」を1110日(火)、121日(火)の2回にわたり開催することに致しました。残念ながら延期となっております第238回、第239回につきましても、来年、順次、開催したいと考えております。

さて、本日の講座では、風土記と古事記・日本書紀の神話が紹介されました。

風土記とは主に国司が大和朝廷へ各国のことを報告したものですが、現存する5つの風土記のうち、唯一完全な形で残っている出雲国風土記の中から、八束水臣津野の命という神様が、小さく作りすぎた出雲の国に、朝鮮半島や新潟、隠岐の島あたりの土地をスキと太縄を使って縫い付けるという壮大なスケールの国造りの神話を解説して頂きました。

また、古事記の中のヤマタノオロチ退治は「勇者が悪龍を退治し姫を得る」というペルセウス・アンドロメダ型神話で、ギリシャ神話をはじめ世界中で同じような話が存在するのは、これが氾濫する川を治水する話であるからだというお話は大変興味深かったです。つまり、年に一度、山から下りてくるヤマタノオロチとは台風の豪雨で氾濫した斐伊川のことで、それによってもたらされた支流の川の氾濫(八つに割れた尾)が、美しい稲田(クシナダ)をつぶすのを出雲の須佐の男(スサノオ)が治水して救ったということだと謎解きされ、神話はおとぎ話ではなく現実の歴史だったのかと感銘致しました。

更に、天皇の正当性を証明するために書かれた古事記・日本書紀では、八束水臣津野の命という神が登場しないのも、スサノオノミコトが高天原を追放されることになっているのも、朝鮮半島に近いことで文化水準が高く、たたら製鉄の技術を持つ出雲が大和朝廷にとっておおきな脅威であったからとの説明はおおいに納得できました。

参加者の皆様も、古典の面白さと奥深さを実感しておられたようでした。

 今回は、本部開催の佐保塾の山口先生の古典講座のファンのご参加をはじめ、佐保カルチャーの開催を心待ちにして頂いていた方も多かったのか、ご案内も十分に出来ませんでしたが定員はすぐにいっぱいになりました。次回は、少し余裕のある小ホールで開催致しますので、さらに多くの皆様のご参加をお待ちしております。