奈良支部だより第73号に「第247回佐保カルチャーの報告」が掲載されましたので、ご紹介いたします。

参加された方はあの日の感動がよみがえり、参加されていない方は次回への期待が沸き上がることと思います。

 

248回佐保カルチャー報告 

 

 奈良には古き仏たち(8)東大寺法華堂の伝日光・月光菩薩像と執金剛神像       

 

コロナ禍、渦中の大学の入構制限が解けて、久しぶりに恒例となった鈴木喜博氏の講座を佐保会館で開講することができました。会館前のナラノヤエザクラが若木ながら瑞々しく葉を繁らせている五月十五日、受講生は四十一人でした。

東大寺法華堂(月堂)の仏像の今回は三回目、塑像です。回目は戒壇堂に移された四天王、回目は本尊不空羂索観音でした。今回その復習から入りましたが、本尊の安置されている八角二重基壇の痕跡から、当初本尊の周囲にいずれも塑像の執金剛神・四天王・梵天(伝日光)・帝釈天(伝月光)が安置されていたことがわかっています。塑像は粘土で成形し乾かしたものですから、細かい所まで表現できる長所と壊れ易い短所を持ちます。それ故梵天・帝釈天は免震建物の東大寺ミュージアムが完成した時、そちらに移されました。執金剛神は元のまま本尊の背後に北向きに。毎年十二月十六日に開扉されます。

 

同一工房で造られたと思われる酷似した四天王との比較から、執金剛神は不空羂索観音より先に造られたのではと『日本霊異記』の説話を援用しての説明でした。対して日光・月光と呼ばれてきた二体は、静謐な祈りの姿です。感情をあらわにした先の五体とは姿態は違いますが、やはり同一工房の作であるとの説明でした。多くの写真資料を使って細かく比較することで浮かび上がってくる造形のすばらしさ、八世紀半ばの文化の高さを堪能できた講座でした。                     (山口裕子 S42文国S43文専国)

 

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 奈良には古き仏たち(8 ―東大寺法華堂の伝日光・月光菩薩像と執金剛神像

        講師 奈良国立博物館名誉館員 鈴木喜博氏 

 

日 時 令和6515日(水) 午前10時~1130 

会 場  佐保会館 

会 費  1000円 (学生は無料)   参加人数  41人

 

248回佐保カルチャー「奈良には古き仏たち(8) ―東大寺法華堂の伝日光・月光菩薩像と執金剛神像―」を、5月15日(水)に41名の参加者を迎え、無事開催することができました。奈良国立博物館名誉館員 鈴木喜博氏の「奈良には古き仏たち」シリーズも8回目を迎え、久しぶりに佐保会館での開催となりました。

 スライドを使わずいかにして仏像の美術鑑賞を行うか!という課題解決のために作成された、写真たっぷりの鈴木先生の資料を使い、今回は、山寺である金鐘寺が総国分寺になり、そして大仏が建立され、東大寺へと名前が変わる天平年間に作成された法華堂の執金剛神像と梵天・帝釈天像(伝日光・月光菩薩像)について解説いただきました。

 前半は、本尊の不空羂索観音と背中合わせに安置されている執金剛神像を、興福寺の緊那羅(八部衆の一人キンナラ)像や戒壇堂の四天王像と比較鑑賞しました。執金剛神像は、緊那羅(キンナラ)像に比べ躍動感があり写実的に表現されているものの戒壇堂の四天王像に比べると統一感に欠けるとのご指摘や、四天王像と細部を見比べたときの類似点の多さは同一系統の作者の手になると言わざるを得ないなどのお話に、興味は尽きませんでした。

 後半は、梵天(伝日光菩薩)、帝釈天(伝月光菩薩)をいろいろな仏像と比較し、解説頂きました。共に穏やかな表情の不空羂索観音との相違点、憤怒の表情の四天王像との類似点、また、鎌倉時代に作られた無著・世親像や、韓国の石窟庵の梵天・帝釈天との類似点など、時代や場所を超えてつながる仏教美術の壮大さの一端を垣間見た気がしました。

 

第248回佐保カルチャーの報告は、「奈良支部だより74号」に掲載予定です。 どうぞ、お楽しみに。